登山中のトイレ対策と水分補給

掲載日：: 2019年07月17日

登山知識・技術

女性にとって登山中のトイレは何かと心配事が多い問題です。でも、「トイレに行きたくなるから」と水分補給を控えてしまうと、あらゆるリスクを抱えることにもなってしまいます。運動生理学の専門家と登山ガイドが、登山中のトイレ対策と正しい水分補給についてアドバイスします。

女性登山者のトイレ事情

女性は男性と違い、隠れることができる場所でなければ、用を足すことが難しいです。女性でも山に慣れている人の中には、「お花摘み」と言い、トイレットペーパーとビニール袋などを用意して木の茂みや岩の影で用を足すことができる方もいます。それでも男性よりも時間がかかるため、水分摂取量を控えてしまうことも多いのが現状で、山でのトイレに対する不安感は多くの人が感じていることです。
しかし、水分の摂取を控えることは熱中症、疲労などにつながり、安全に登山を続けることができなくなります。トイレ問題に対する不安感を少しでも軽減させることで、しっかりとした水分補給を行いながら、楽しく安全に登山を続けることが大切です。

＜トイレに困るケースいろいろ＞
・ルート上にトイレがない
・登山道が渋滞していて動けない
・森林限界を超えた稜線で隠れる場所がない
・トイレに着いたら長蛇の列

登山における水分不足のリスク

登山中に水分摂取が不足すると、様々なトラブルが出てきます（表1）。

登山中や登山後に女性があげる問題に「むくみ」がありますが、その原因は水分不足による脱水の影響かもしれません。体が「脱水」を感じ取ると、尿を減少させるホルモン（抗利尿ホルモン）が分泌されます。このホルモンは分泌され始めると、12～48時間は出続けます。下山して1～2日後までむくんでいた経験はないでしょうか。それは水分摂取不足だった可能性が大きいです。
そして、女性が登山を行う際には、「生理」も大切な問題です。生理中はさらに脱水状態になりやすいため、普段よりも多めの水分摂取が必要になります。また、生理による体調不良と熱中症による体調不良の判断が難しくもなります。自分自身の体調をしっかりと把握しながら、こまめな水分摂取を心がけるようにしましょう。

正しい水分補給について

登山中の脱水量は、下記（図1-1）の式で求めることができます。登山を計画する際に、そこでの脱水量を予め計算しておくと、摂取しなくてはならない水分量が把握できます。安全に登山を行うためには、この式から求められる脱水量の7割以上を摂取することが望ましいとされています。
また、2日間以上の縦走をする場合は、登山をしていない、つまり小屋などで過ごしている間に消費する脱水量も推定し、その分も補給することが必要です。その際の式は図1-2に示しています。現在は、登山のグレーディング表（https://www.yamagirl.net/knowhow/1628/に掲載）にコース定数が記載されているので、目的地が決まったら、脱水量を計算しておくことをお勧めします。そして、外気温が低い時でも同じくらいの脱水は起きることも注意しておくことが必要です。

一度に大量の水分を摂取してしまうと、尿として排出される量も増えます。例えば、スポーツの場面では15～20分ごとの給水が勧められていますが、登山では難しい場合もあるため、30～60分ごとの水分摂取を行うようにしましょう。登山の前日から水分摂取を多めにしておくことも効果的だと言われています。水分補給の種類としては、夏山で汗をかいている際は、スポーツドリンクなどの電解質飲料がお勧めです。
脱水を避けるために、日常生活と同じ回数くらいトイレに行けるよう、水分摂取を心がけてください。

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