登山に効くサプリメント/山ガールスタートマニュアル
- 掲載日:
2017年10月12日
ボディ・ヘルスケア
登山に適したサプリメントと効果的な摂取方法について、運動生理学の専門家にご説明いただきました。
サプリメントは必要?
現在、多くのサプリメントが薬局やスーパー、コンビニで販売されています。厚生労働省の調査によると、調査対象者の3〜4割の人がサプリメントを使用していることが報告されています。しかし、その1〜2割は、その使用の安全性に不安を持ちながら使用している実態もあるといわれています。
サプリメントは「栄養補助食品、健康補助食品」であるため、食事でしっかり栄養を摂取できている場合は、あえて摂取する必要はありません。過剰摂取によって、健康障害が生じるリスクもあります。しかし、食事摂取だけでは栄養素が足りていない場合や、登山のような長時間の運動でエネルギー消費量が大きい場合、サプリメントを上手に摂取すると、栄養の吸収を助け、疲労からの回復が早くなったり、パフォーマンス向上につながったりします。
登山においてはタンパク質(アミノ酸)の補給が重要
タンパク質は20種類のアミノ酸によって合成されており、体内で合成されないアミノ酸は必須アミノ酸と言います。その中でも、バリン、ロイシン、イソロイシの3つのアミノ酸は分岐鎖アミノ酸(Branched-Chain Amino Acid:BCAA)と呼ばれています。
BCAAのサプリメントは多くの製品が販売されています。BCAAはタンパク質合成に作用するものですが、それ以外にも糖質代謝を調整する機能を持つことがわかっています。図1は2時間の自転車こぎ運動(65〜75%VO2max強度)とスプリント運動で糖質(グリコーゲン)を枯渇させた後、すぐに食事を摂取して、運動終了0-40分後、40-120分後、120-240分後の筋肉内のグリコーゲン濃度を測定した結果です。それによると、運動終了直後に糖質だけを摂取するよりもタンパク質を合わせて摂取する方がグリコーゲンの回復は良かったということです。(※登山後の疲労回復方法も参照)
グリコーゲンの回復速度は、運動終了後1時間までが最も速いとされますが、登山後すぐに食事ができるとは限りません。その際に役立つのがサプリメントです。糖質を摂取するのと同時に、BCAAが豊富なサプリメントの摂取が効果的です。
▼BCAAが豊富に含まれたサプリメントの代表格「aminoVITAL」
また、アミノ酸サプリメントは運動前に摂取することも効果的であると言われますアミノ酸サプリメントを摂取させて、階段を1200m上り、1200m下るという登山シミュレーションを行った結果、アミノ酸非摂取グループよりもバランス能力の低下が小さかった(改善した)という研究報告もあります。
また、同じ研究において、アミノ酸摂取グループの方が全身反応時間(敏捷性)の低下が小さかったとのことです。これはアミノ酸サプリメントに含まれているBCAAが、脳の中枢性疲労を軽減させた可能性があるためだということです。
さらに、運動15分前にBCAAを摂取したグループは、非摂取グループよりも、運動直後、2日目、3日目、4日目、5日目まで、筋肉痛が少なかったという報告もあります。
これらのことより、短時間の登山では運動前と運動直後の糖質+タンパク質(BCAA)摂取は、①中枢性の疲労を軽減させ、転倒や滑落の防止につながる可能性や、②筋肉痛軽減やグリコーゲン回復による疲労回復を促せる可能性があると考えられます。また、縦走などの長時間に渡る登山では、登山中にも糖質とタンパク質を適宜摂取することが良いでしょう。
ビタミンBの摂取方法と効果
ビタミンは多くの食品に含まれていますが、加工・調理・保存する過程で、その性質を保つことが難しいため、サプリメントで補う効果が高いと言われています。実際に、多くのビタミン関連のサプリメントが市販されています。
中でも糖質の摂取を助けるビタミンBは、登山などの長時間運動では必要なビタミンですが、ビタミンBの性質上、食品に含まれる量そのものが体内に吸収されるわけではありません。そのため、ビタミンBは食事+サプリメントで摂取すると、摂取率が上がります。それによって、糖質の摂取の効率も良くなるのです。ビタミンBは食事と一緒、もしくは食後に摂取することが効果的です。
参考文献
1)lvy JL et al.: Early postexercise muscle glycogen recovery is enhanced with a carbohydrate-protein supplement.J Appl Physiol. 93: 1337-1344, 2002.
2)萩原正大ら:登山をシミュレーションした階段歩行時の疲労に及ぼすアミノ酸サプリメント摂取の効果. 登山医学. 28: 103-112, 2008.
3)下村吉治 編集:サプリメントのほんととウソ−エビデンスに基づいたサプリメントの有効性—(NAP. 2013)
文・監修:健康運動指導士 安藤 真由子